【成田空港】スーツケースラッピングから世界情勢が見える

成田空港第1ターミナル南ウィングの荷物ラッピングサービス
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2026年11月4日、成田空港第1ターミナル。台湾大手のエバー航空に搭乗し、台北経由で米国のダラス・フォートワースへの取材旅行に向かう私の目の前に、搭乗カウンターとは別の人々の行列ができていた。

南ウイングの搭乗ゲート前。スーツケースを引きずった外国人観光客らがずらりと並んでいる。彼らの視線の先にあるのは、「BAGGAGE WRAPPING(バゲージラッピング)」と書かれた看板だった。

ろくろのような回転台に載せられたスーツケースが、小気味よく回る。その回転に合わせ、男性店員が手慣れた手つきで透明のプラスチックフィルムをぐるぐると巻き付けていく。わずか2〜3分の早業で、スーツケースがフィルムでミイラのように巻かれ、がっちりとコーティングされた。

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スーツケース1個のラッピング1500円~

1日に多い時で150個のスーツケースをフィルムで巻くという近藤清文さん
1日に多い時で150個のスーツケースをフィルムで巻くという近藤清文さん

成田空港で旅人たちの荷物にフィルムを巻いていたのは、バッゲージラッピング専門店「 wRapper RAPI」の近藤清文さん(67)。旅行代理店を定年退職後、友人に誘われて「暇つぶしに」この仕事を始めてもう4年になるという。しかし、その手さばきと、そこから見える世界の情勢は決して「暇つぶし」の域に留まらない。

「ここに来るのはね、カギのないスーツケースを他人に開けられたくない、中身を盗まれたくないという人。それから、スーツケースを傷や破損、水濡れから守りたい人。スーツケースのファスナーが壊れてしまって締まらないから巻いてという人もいますよ。特に海外の航空会社は荷物を放り投げるところも多いみたいで、スーツケースがよく壊れるんですよ」

近藤さんによると、早朝7時半からの8時間勤務の中で、多い日には1日で150人分ものスーツケースをラッピングする。利用客の7〜8割は外国人で、日本人は2〜3割。価格は通常サイズで1500円〜2000円。車いすやベビーカー、ゴルフバッグやスノーボードといった特殊な形状のものは2500円で対応する。

世界情勢を映す

手際よく荷物をラッピングする近藤さん
手際よく荷物をラッピングする近藤さん

時には「中国では無料でやってくれるところがあるのに、ここではお金を取るのか」と聞かれることもあるのだとか。欧州の空港では預入荷物のラッピングは古くからあったが、日本では成田空港第1ターミナルが最初で2012年にスタート。現在は羽田空港(東京国際空港)や関西国際空港にも同様のサービスがある。

なぜ、いま成田でこれほどまでにバゲージラッピングが求められているのか。近藤さんがふと漏らした言葉が、非常に印象的だった。

「感覚的ですけどね、世界情勢が不安定になると、空港でラッピングをする人が増える気がします」

預け入れた荷物が、自分の手元を離れてから再び現れるまでの時間。見えない場所で荷物がどう扱われるか、何が起きるか分からないという不安。バゲージラッピングに並ぶ人たちがお金を払って包んでいるのは、スーツケースだけではなく、旅の道中における「安心」そのものなのかもしれない。

ちなみに私のスーツケースの中身は下着やジーンズ、パーカーなどの衣類だけ。ラッピング代の方が高くつきそうなので、今回はお世話にならなかった。

wRapper RAPI

住所:成田空港第1ターミナル 南ウイング4F、保安検査前(中央ビル4階にも)
営業時間:8:00-19:00

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