バルト三国の中央に位置する森の国ラトビアを2026年6月、旅しました。中世から700年以上も列強に支配されながら、独自の暮らしと文化を紡いできました。首都リーガだけでなく田舎に足を伸ばせば、ギュッと心をつかまれます。北海道と交流がある北部ヴァルミエラ地方の小さな町では、地元料理のワークショップに参加しました。食材が少ない時代の工夫が伝わる、あたたかい味わいでした。
北海道東川町と交流30年

ヴァルミエラ(Valmiera)地方にある町ルーイエナ(Rūjiena)は30年以上、北海道中央部の東川町とつながりがあります。「日本ルーム」がある展示センターのリーガ(Liga)さんが説明してくれました。彼女はずっと交流にかかわっていて、「上を向いて歩こう」「100万本のバラ」のギターでの弾き語りも披露してくれました。

年に1度は2つの町の子どもたちが訪問しあっているそうです。交流が続いています。「日本の子どもは太鼓演奏を教えたり、ラトビアの文化を学んだりと、本当の家族のように親密な関係を築いているんですよ」。

困難な時代、食べる工夫

展示センターのすぐ近くにあるルーイエナ文化会館では、郷土料理が学べるワークショップに参加しました。町で「食の遺産」プロジェクトを担当しているグナさんが迎えてくれました。

「伝統のよさを見直そうと地元のアーカイブをひっくり返し、私たちの親や祖父母の世代が何を食べていたのかを調べました」。写真が1枚もなかったのでレシピを頼りに「味」を再現しました。
テーブルに並んだ大皿料理と花のコーディネートに歓声が挙がりました。
料理にはそれぞれ物語があります。「どうぞ召し上がれ。味わいながらルーイエナの歴史と、あたたかさを感じていただけたらうれしいです」とグナさんは話しました。実際に作ってもらおうと、ワークショップやお祭りでレシピを配っています。スライド上映された一部を紹介します。
ルーイエナ・サラダ

鮮やかなピンク色はビーツの色です。グリンピースとピクルスにサワークリームやマスタードを混ぜています。1970年代に生まれたレシピですが、今でもお祝いの席には欠かせません。
茹でたビーツ:200g
酢漬けのきゅうり(ピクルス):200g
グリンピース:250g
玉ねぎ:200g
ソース: サワークリーム 250g、マスタード、塩、コショウ(お好みで)
ルーヤ川の爽快
「ルーヤス・ヴェルドゥゼ(Rūjas veldze)」は1970年代から「地元のコーラ(local Coca-Cola)」として親しまれています。「ルーヤ川の爽快」という名前も郷愁を誘います。グナさんは「市販コーラよりもずっと好き」と話しています。
冷たいコーヒーとリンゴジュースを混ぜたものです。コーヒーの焙煎の香りとリンゴの甘酸っぱさが合わさります。子どもたちだけでなく、強いお酒を割るチェイサーとしても重宝されていたそうです。
冷ましたブラックコーヒー: 400 ml
クランベリージュース、またはリンゴジュース: 800 ml
砂糖: 100 g
水: 700 ml
赤えんどう豆

冬には赤えんどう豆が欠かせません。クリスマスには必ず食べる伝統食で「豆を残すと残った豆の数だけ泣く」という言い伝えがあるそうです。

フルーツスープ

バルト三国や北欧で親しまれているデザートスープで、片栗粉入りとろみがあります。ホイップクリームを添えるのが定番です。

子どもの本の味(シナモンロール)

そして、デザートには「子どもの本の味」です。旧ソ連時代は現在のように、簡単にお祝い用のケーキが手に入りませんでした。限られた材料でつくれる、このシナモンロールが定番でした。しばらく忘れられていましたがグナさんのお母さんのレシピをもとに、パン屋さんと協力して「復活」させました。
シナモンたっぷり、シンプルな甘みがたまりません。ほのあたたかくて気に入りました。

隣にある緑を抜けると、織物工房を兼ねたセレクトショップがあります。小さい店内には伝統のミトンやリネン、木製のスプーンなど持ち帰りやすいアイテムがそろっていました。地元職人の手仕事ばかりで、宝探しにワクワクしました。1枚6ユーロのリネンのクロスと、ほどよい深さの木製スプーン(3.5ユーロ)を買いました。



ルーイエナ文化会館(Rūjienas Kultūras nams)
住所:Upes iela 9, Rūjiena, Rūjiena pilsēta, Valmieras novads, LV-4240 ラトビア
公式サイト
ラトビア バルト三国の中央に位置する。人口180万人。面積は約6.5万km²で、九州と四国を足したぐらい。国土の半分が森林。中世からドイツやポーランド、スウェーデン、ロシアなどの支配を受け、20世紀には独ソに占領された。1991年にソ連から独立を回復。公用語はラトビア語。通貨はユーロ。
「バルト海の真珠」と呼ばれる首都リーガは13世紀からハンザ同盟に加盟し、バルト海交易の拠点として栄えた。ドイツ商人らの営みを今に伝える街並みは「リーガ歴史地区」として1997年、ユネスコ世界遺産に登録された。北緯57度はモスクワや米アラスカ州南部と同程度。人口は60万人ほどで、バルト三国では最大。
(取材協力:ラトビア投資開発公社<LIAA>観光部、フィンエアー)







