バルト三国の中央に位置する森の国ラトビアを2026年6月、旅しました。中世から700年以上も列強に支配されながら、独自の暮らしと文化を紡いできました。この記事では首都リーガ郊外で毎年6月に開かれる「森の民芸市」を紹介します。湖のほとりに500もの店が並び、あたたかな手仕事の世界に浸ることができます。(1ユーロ≒184円、2026年6月現在)
森の民芸市 (Gadatirgus) とは


民芸市はラトビア語で「ガダティルグス(Gadatirgus、annual fairの意味)」と言います。その名の通り毎年6月1週目の土日に、首都リーガから車で20分ほどのユグラ(Jugla)湖沿いにある「ラトビア野外民族博物館」で開かれます。1971年から始まって2026年の今回で55回目を迎え、ラトビア最大の規模を誇ります。布や陶芸、木工など職人にとっては年に一度の「晴れ舞台」、2日間で半年分を売る職人もいるそうです。1日中いても回り切れないほどです。

訪ねたのは初日の午前10時過ぎで、少し雨が降っていました。国道A2沿いには駐車場を待つ車の列がありました。人気ぶりが伝わってきます。入場には博物館のチケット8ユーロが必要です。とにかく広くて店が多いので、まずは1周してみましょう。飲食コーナー以外はジャンル分けされておらず、衣食住が入り混じっています。ストライプや格子柄のスカートなど、民族衣装を着た人がたくさんいます。
あいさつは「ラプディエン!」



入るとすぐ、花や植物を売るコーナーや、隣国エストニアからの出店やキノコ栽培セットを売る屋台がありました。残念ながら菌床は日本に持ち込めませんが、跡継ぎらしい娘さんに「キノコは本当に育ちますか?」などと質問しました。飲食の屋台なら「ラプディエン!(こんにちは)」と立ち寄ると試食をすすめられます。片言でも話し、作り手と会えるのがマーケットの魅力です。



伝統衣装のスカートやミトンも豊富です。日本からのグループもお見かけました。あまりにもたくさんあって目移りします。スカートやラグにはなかなか手が出ませんが、丈夫そうなリネンのキッチンクロスを手にしました。売っていたおばあちゃんに「何に使うの?」と英語で訊くと、ゴシゴシと手をすり合わせるしぐさをして教えてくれました。

地面に直接置かれた編みかごに目を奪われます。平らなカゴは薪を運ぶのに使われるとか。ラトビアの人が愛する森でのベリー摘み、キノコ狩りにはもってこいですし、パンを入れてもよさそうです。




はちみつ屋台では木のさじで試食させてもらい、ハチの巣(ハニーコーム)を買いました。




お気に入りを見つけるのは宝探しのようです。現金しか使えない店が多いので、買い物をする気であればユーロの現金を用意しておくのがよいと思います。買わなくてものんびりした雰囲気を楽しむだけでも価値があります。
ラトビア野外民族博物館


会場となるラトビア野外民族博物館は1924年にオープンしました。1918年の独立以降、急速な近代化や第1次大戦の荒廃による危機感からプロジェクトが始まりました。87ヘクタールの広大な松林には、ラトビアをつくる4地方ごとの集落に、昔ながらの生活様式が展示されています。
- ヴィゼメ (Vidzeme):北部~中部。首都リーガや渓谷が美しいガウヤ国立公園を含む。
- クルゼメ (Kurzeme):西部のバルト海沿岸。
- ゼムガレ (Zemgale):南部のハンガリーやリトアニア国境。
- ラトガレ (Latgale):南東部のロシアやベラルーシ国境。


17世紀から1930年代に建てられた118棟の農家や納屋、サウナ、教会などが移転されたそうです。かわいい民族衣装を着たガイドさんがいて案内してくれます。自分の棺桶をつくって屋根裏に置いていたり、糸をつむぐ車のわきには赤ちゃんを見守るための棒があったり、昔の暮らしが分かります。
お昼は元・旅籠の「Priedes Krogs」


ランチは入口近くにあるレストラン「プリエデス・クログス(Priedes Krogs)」でいただきました。街道沿いの旅籠だった築200年近い建物で、「これぞラトビア」が味わえます。


アミノ酸たっぷりのヘンプシード(麻の実)を練り込んだバターは、黒パンにたっぷりのせると主役のおいしさです。三日月型をしたベーコン入りの「ピーラーギ」、少し酸っぱい青菜・ソレル(スイバ)のスープも定番です。昔から農作業に欠かせない黒パンの発酵ドリンク・クワスは甘さ控えめのコーラのようで、口に合いました。





民族衣装をまとった女性がメニューを解説してくれます。ベリーのデザートに幸せな気分になりました。
レストランに行かなくても食べ物の屋台がたくさんあります。ジュージューとお肉の焼ける音とにおいに誘われて、思わず列の合間からのぞきました。豪快な骨付き肉のバーベキュー、大鍋の煮込みなど、日本ではなかなかお目にかかれません。



午後には晴れてきて、森の散歩が楽しめました。買い物だけではない旅のよさを実感しました。



ラトビア野外民族博物館(The Ethnographic Open-Air Museum of Latvia)
住所:Brīvdabas iela 21, Rīga, LV-1024 ラトビア
営業時間:10:00-18:00
入場料:大人8ユーロ
ラトビア バルト三国の中央に位置する。人口180万人。面積は約6.5万km²で、九州と四国を足したぐらい。国土の半分が森林。中世からドイツやポーランド、スウェーデン、ロシアなどの支配を受け、20世紀には独ソに占領された。1991年にソ連から独立を回復。公用語はラトビア語。通貨はユーロ。
「バルト海の真珠」と呼ばれる首都リーガは13世紀からハンザ同盟に加盟し、バルト海交易の拠点として栄えた。ドイツ商人らの営みを今に伝える街並みは「リーガ歴史地区」として1997年、ユネスコ世界遺産に登録された。北緯57度はモスクワや米アラスカ州南部と同程度。人口は60万人ほどで、バルト三国では最大。
(取材協力:ラトビア投資開発公社<LIAA>観光部、フィンエアー)







