フランスの国会議事堂は元老院(上院)がリュクサンブール宮殿、国民議会(下院)はセーヌ沿いのブルボン宮殿です。元老院は9月の「欧州文化遺産の日」のみ一般公開されますが、下院は通年、無料の見学ツアーがあって1人でも参加できます。200年以上前から現在もなお、政治の舞台である10以上の部屋をじっくり回る1時間半は圧巻でした。オンライン予約から集合場所、当日の流れを紹介します。
予約はオンラインで

見学ツアーは無料ですが予約が必要で、国民議会(Assemblée nationale、アソンブレ・ナシオナル)公式サイトから申し込みます。日曜以外はほぼ連日、1日1回以上開かれています。
空いている日に申し込むと、メールでQRコード付きのPDFが送られてきました。国会だけに身分証明(パスポート)の原本を持参する必要があります。大きな荷物は持ち込めません。

オルセー通りに集合

メトロの最寄り駅は12号線のAssemblée Nationale駅です。集合場所はオルセー通り(33 quai d’Orsay)で、駅からだと3分ほどです。宮殿の前を通り過ぎ、“ACCUEIL”(受付)と書かれている扉が目印です。
私たちが予約したツアーは11時スタートでした。時間きっかりに門が開き、中に入りました。パスポートとQRコードの確認、簡単な手荷物検査がありました。
女性ガイドの説明が始まりました。「英語がいい?」と訊かれ、英語による音声ガイドのQRコードを出してくれました。
ツアー中は単独行動は一切禁止、写真撮影はOKです。「議会の開催中で、実際に委員会が進行中の『ラマルティーヌの間』は見学できません。でも本会議場(hémicycle、エミシクル)にはしっかり入りますよ」と説明されました。
祝祭の間(Galerie des Fêtes)

格調高い祝祭の間で、宮殿の成り立ちについて説明がありました。ブルボン宮殿は太陽王ルイ14世と、愛妾だったモンテスパン公爵夫人との間に生まれた娘、ルイーズ・フランソワーズ(ブルボン公爵夫人)が恋人ラッセー伯のアドバイスを受け、1722年から6年間で建てました。
国民議会が最初に開かれたのは1798年です。当時の持ち主だったブルボン公爵夫人の孫が1791年、フランス革命の混乱から海外へ亡命し、主を失った宮殿は国有になりました。それから220年以上たった今もなお、議会が開かれ続けています。
「祝祭の間」のルネサンス様式の装飾は、ルイ・フィリップが王位に就いていた7月王政期(1830〜1848年)に、公式宮廷画家だったフランソワ=ジョセフ・エイムが手がけました。国民議会の議長が公邸(ラッセー館)から本会議場へと向かう際、日常的に通り抜ける廊下で、儀典にも使われます。全長は180メートルにもなります。

「大ロトンダ(La Grande Rotonde)」は議員やメディアのための場所です。エレベーターは1890年につくられていて、パリで一番古いエレベーターです。

足音の消える間(Salle des Pas-Perdus)

「足音の消える間(Salle des Pas-Perdus)」では記者が議員に取材をします。19世紀末までは、一般の市民が自由に入って、自分の選挙区の議員と立ち話ができましたが、1887年に当時の首相ジュール・フェリーの暗殺未遂事件が起きてから、セキュリティが厳しくなりました。

「天井画は<市民の王>と呼ばれたルイ・フィリップのお抱え画家オラス・ヴェルネ(Horace Vernet)によります。『ルイ・フィリップの時代はこんなに平和!』というプロパガンダです。よく見ると、平和の女神やライオン、ハチといった古典的な絵画に工場の煙突が描かれています。当時は産業革命のさなかでした」
通路:議員と記者が丁々発止


通路(Salle de circulation)は、本会議場から出てきた議員たちの通り道になっています。議員は、本会議場を出て、ロープで仕切られた『議員専用ルート』を通って、委員会の部屋や自分たちの執務室へと戻ります。記者たちは議員からコメントをとるために、このロープの周りで待ち構えます。

このスペースは『追悼の空間(Salle d’hommage)』でもあります。第一次世界大戦と第二次世界大戦の2つの戦没者記念碑が建てられています。

ここでいったん「四柱の庭園(Jardin des Quatre-Colonnes)」に出ました。


本会議場は半円形


いよいよ本会議場へ向かいました。本会議場の別名“hémicycle”(エミシクル)は、フランス語で『半円形』との意味です。577人の議員が座ります。ガイドが「ちょっとしたトリビアです」と笑いながら面白い話を教えてくれました。


「1798年に作られた最初の本会議場は、『緑色』を基調とした部屋でしたが、リニューアルされて今の『赤色』になりました。なぜ赤色になったと思いますか?実は『議員たちの顔色が一番きれいに、健康的に見えるから』という理由で赤が選ばれたと言われているんです」


いくつかの座席に、小さな真ちゅうのプレートがあります。歴史に名前を残した議員たちの指定席だった場所です。例えば『185番』の席はフランス社会主義の父、ジャン・ジョレスが座って熱弁を振るっていた席です。



ドラクロワの図書室

図書室も必見です。1796年につくられ、議員や関係者が利用できます。巨匠ドラクロワによる天井画が壮麗で、言葉を失いました。70万冊が収容されています。そう広くはありませんが一冊ずつが言葉の力を放っているようで、圧倒されました。

最後にキヨスク(新聞や土産物コーナー)を通って解散になりました。ネームホルダーを返却し、ガイドの女性に見送られます。これほどの内容が無料とは。フランス語が分からなくても英語のオーディオガイドか、Google翻訳の会話モードにすれば理解の助けになるはずで、参加する価値は高いです。文化を大切にするフランスの底力を再認識しました。




フランス国民議会(Assemblée nationale)
住所:126 Rue de l’Université, 75007 Paris, フランス
入場料:無料・要予約
公式サイト







