日本のルノアールやドトール、町の喫茶店を想像してうっかり入ろうとしてはいけません。オランダの「コーヒーショップ(Coffeeshop)」の話です。なぜなら、オランダでCoffeeshopはいわば隠語で、実際は「ソフトドラッグを含む大麻販売店」という暗黙のサインだからです。そこでコーヒーを優雅に飲む人はいません。
2025年11月から12月にかけてオランダ・ロッテルダムに国際スポーツ大会の取材で滞在しました。その際に連泊していたロッテルダム中央駅から歩いて15分のホテル「シティハブ・ロッテルダム」の真向かいがCOFFEESHOP WITTE DE WITH(ヴィット・デ・ウィット)でした。宿のコンシェルジュにあたる「シティホスト」が教えてくれました。「この館内は安全ですが、夜はちょっと気を付けて。向かいの店には特殊な人たちが出入りするから」と。
Coffeeshopは一単語、英語のCoffee shopとは区別

オランダで大麻販売店は1970年代に喫茶店で大麻の売買が行われていた流れでコーヒーショップ(Coffeeshop)と呼ばれています。Coffeeとshopの間にスペースがなく一つの単語なのが特徴で、英語のCoffee shopとは意味が違います。 ちなみにコーヒーを楽しめる場所はKoffiehuis(コフィーハウス)や普通にCafe(カフェ)と呼ばれます。
オランダ最大の都市アムステルダム市内には160件以上、第2の都市ロッテルダムには約35〜40軒前後のコーヒーショップがあるそうです。
寛容なのはいいけれど
私の元同僚・朝日新聞欧州総局ブリュッセル駐在の牛尾梓記者は、自身がオランダを訪れた際に「大麻アレルギー」かと思われる症状が出て鼻水が止まらなくなったという記事でこう書いています。
勘違いされやすいが、オランダは大麻を合法化していない。違法としつつも積極的には罰しない「非刑罰化」政策を76年からとっている。そのため、観光客が大麻目当てに訪れる「ドラッグ・ツーリズム」が浸透。オランダ政府の調査によると、アムステルダムを訪れる年間2千万人の外国人観光客のうち58%が大麻目的だという。
オランダの寛容なカルチャーは好きですが、大麻などに対する、法的には違法でも、厳格には取り締まらない「寛容政策」にはひずみもありそうです。「ドラッグ・ツーリズム」が外国人観光客の半数以上とは驚きです。
私自身、たばこをたしなむ愛煙家。実際にこのコーヒーショップを真向かいから、たばこを吸って観察していると、外には用心棒がいて、数分に1人、2人のペースで頻繁に人が出入りし、その中には外国人と思われる人がパスポートを見せていました。
夜間に外でたばこを吸っていると、向かいのコーヒーショップから人が寄ってきて、「ニーハオ!(私を中国人と思い込んで)」「ジョイント(紙巻き大麻)か?」「小銭を恵んでくれないか」などと話しかけられるのにも慣れました。身の危険を感じるほどではありませんが、一瞬、身構えてしまいますし、あまり気持ちのいいものではありません。オランダのCoffeeshopには近寄らない方が無難でしょう。







