ミュンヘンに来たら絶対にやりたかったこと。それは本場ドイツビールの飲み歩きです。毎年9月から10月にかけて行われる世界最大のビール祭り「オクトーバーフェスト」で知られるミュンヘンの街には、創業700年の歴史あるビアホールや、3,000人収容の大箱、ライブ演奏が楽しめるホール、午前9時から開いているホールなど個性豊かなビアホールが点在します。そこはまさに「ビール好きパラダイス」。2024年4月、Pen&Voyage編集部は、ミュンヘンで絶対に外せない定番ビアホールから、そこで相席した客に聞いた知る人ぞ知るホールなど、ビアホール5店をめぐりました。豪快なバイエルン料理とともに味わった本場のビアホールは喉だけでなく、人生も潤してくれる場所でした。
レーヴェンブロイケラー(Löwenbräukeller)
レーヴェンブロイは15世紀の創業で、直営店のレーヴェンブロイケラーがミュンヘン中央駅から徒歩10分にあります。私たちはミュンヘンで味わう記念すべき1杯目を少しでもおいしくいただこうと、敢えて滞在先のミュンヘン工科大学近くから30分ほど歩いて向かいました。ビール貯蔵庫があった建物だそうですが、お城にしか見えません。2,300人入れるそうです。午後6時半ごろと早い時間だったので空いていました。日本人グループも何組かいました。
気分は王者「ライオン」
2018年まではアサヒビールがライセンス契約し、国内生産されていたこともあり、レーヴェンブロイは日本人にもおなじみのブランドですね。「レーヴェン」は獅子(ライオン)、「ブロイ」は醸造所(ブリュワリー)。王者の証であるライオンがブランドシンボルです。現在、コストコなどで購入できる日本に流通する白い缶入りのレーヴェンブロイの多くは韓国産です。ジョッキで飲む本場のレーヴェンブロイは麦の味がしっかりして、なおかつ飲み口はすっきり。やはり一味違います。0.5リットルが5.6ユーロ、1リットルが11.2ユーロです。
バイエルン地方伝統のレーダーホーゼン(革製の半ズボン)がよく似合うスタッフはサービス精神旺盛でノリノリ。カメラを向けるとポーズも決めてくれるなど、おもてなしもうれしかったです。
ビールに合う料理のメニューも豊富です。バイエルン名物のシュバイネハクセ(Schweinshaxe)がおすすめ。骨付きの豚すね肉を、パリパリにローストした料理です。じゃがいもだんご・クヌーデル(Knödel)が添えてあるのがお約束です。モチモチした食感がたまりません。これでもハーフサイズで、17.5ユーロでした。グリルされたパキッパキのソーセージにはザワークラフトが下敷き、ホースラディッシュの千切りがトッピングされていて、これもアクセントとして最高でした。グヤーシュは11.5ユーロ。グヤーシュはミュンヘンを訪ねる前、ハンガリーでよく食べたのですが、この店のはビーフシチューのようにサラッとしていながら牛肉がゴロゴロ、ボリュームたっぷりでした。
レーヴェンブロイケラー(Löwenbräukeller)
住所:Stiglmaierplatz, Nymphenburger Str. 2, 80335 München, ドイツ
営業時間:11:00-23:00(月-木、日)、11:00-24:00(金・土)
URL:https://loewenbraeukeller.com/en/
16世紀から続くホーフブロイハウス(Hofbräuhaus)
ミュンヘンでビアホールに1か所しか行けないとしたら、やはりここでしょう。ホーフブロイとは「宮廷醸造所」の意味で1589年、バイエルン国王のために造られました。まさに「ドイツ国立醸造所」が成り立ちです。現在は州立で、ミュンヘン中心部マリエン広場の近くに3,000人が入れる「ホーフブロイハウス」を直営しています。訪れた客はモーツァルトにエリザベート(オーストリア皇妃)、レーニンとそうそうたる名前が並びます。1920年にはヒトラーが集会を開き、2,000人の前で演説したことで知られています。
ホーフブロイハウスは3階建て。入口からはそこまで広く思えませんが、一歩足を踏み入れるとその規模に圧倒されました。とにかく大きくてにぎやかです。午後3時半ごろでしたが満席です。相席ありなのが新鮮です。注文はテーブル担当のスタッフにします。店内にはスタジアムや駅のように、首からプレッツェル入りの箱を下げた売り子もいました。
ミュンヘンの定番・シンボル HBオリジナル
バンドの生演奏に合わせて踊る人、バイエルン・ミュンヘンのユニフォーム姿で盛り上がる人…観光客だけでなく地元の人にも愛されているのが伝わります。
頼んだビールは「HBオリジナル」。まさにミュンヘンのシンボルともいえるビールでオクトーバーフェストではど真ん中の主役のブランドです。アロマホップが香るラガービールはゴクゴク行けて、バイエルン名物の白ソーセージ(Weißwurst)によく合います。1リットル10.8ユーロ。
白ソーセージ(Weißwurst)はお湯に2本、ぷかりと浮かんできました。ナイフで切って皮をむき、甘いマスタードをつけて食べるのがならわしです。7.2ユーロ。
ホーフブロイハウス(Hofbräuhaus)
住所:Platzl 9, 80331 München, ドイツ
営業時間:11:00-24:00(無休)
URL:https://www.hofbraeuhaus.de/en/
シュナイダーブロイハウス(SCHNEIDER BRÄUHAUS MÜNCHEN)
シュナイダーは1872年、それまで王室専用だったヴァイスビール(小麦ビール)を一般向けに醸造し始めました。他のビアホールに比べるとこじんまりしています。朝9時から営業しているので「昼呑み」どころか「朝呑み」できるビール好きにはたまらないスポットです。旧名は「ヴァイス ブロイハウス」(Weisses Bräuhaus)で、GoogleMapや外観はそのままの名前が残っています。訪ねたのは午後5時過ぎで、席は半分ほど埋まっていました。天井が高い開放的なビアホールで内装やしつらえも落ち着いています。
念願の白アスパラガスはここで
ヴァイスビールの名門、シュナイダーに来たのですから、ビールはやはり小麦系でしょう。高品質のホップと大麦6:小麦4のシュナイダーヴァイス・オリジナルをオーダーしました。グラスに注がれたアンバーカラーのビールは見た目にも美しく、若干の濁りがあります。キンキンに冷えているのに、なぜか温もりが感じられる味わいです。
ビールに合わせたのは、ドイツに来てからずっと食べたかった白アスパラガス(Spargel)。英語のメニューには”Barvarian asparagus from the Viktualien market”(ヴィクトゥアリエン市場からのバイエルン産アスパラガス)とありました。ヴィクトゥアリエン市場はマリエン広場にも近い、200年続く野外市場です。付け合わせとして溶かしバターもメニューにありましたが、定番のマヨネーズのようなオランデーズソースを選びました。19.9ユーロ。春のヨーロッパで愛される旬の味で、4-6月に渡欧したらぜひ食べたい一皿です。滞在先のエアビーのオーナーには「買ってきてここでゆでたらいいよ」と言われたのですが。
シュナイダーブロイハウスの良さは、前述の二つのビアホールに比べて、それほど「観光地化」していないところです。地元のビール好き、特に独り飲みを楽しむ客も多い印象で、喧騒とは離れて落ち着いて飲み直すにはぴったりです。実際、私たちは偶然相席した地元の男性1人客と会話を楽しみ、彼は私たちにお勧めのビアホールを2件、この店の紙ナプキンに書いてくれました。旅に関するこんなことわざがあります。All journeys have secret destinations of which the traveler is unaware (Martin Buber) . 全ての旅には旅人も知らない秘密の目的地がある。この男性に教えてもらった店が次の「目的地」になりました。
シュナイダー ブロイハウス(SCHNEIDER BRÄUHAUS MÜNCHEN)
住所:Tal 7, 80331 München, ドイツ
営業時間:9:00-23:30(無休)
URL:https://www.schneider-brauhaus.de/en
アウグスティナー シュタムハウス(Augustiner Stammhaus)
アウグスティナーは修道院付属の醸造所として1328年、創業しました。伝統を誇るミュンヘンビールでも最古の醸造所です。マリエン広場の周辺に系列店がいくつもあり、地元の人に愛されている感じが伝わってきます。前述のシュナイダーブロイハウスで相席になった男性のお勧めは、2店ともアウグスティナーでした。
そのうちのひとつ「シュタムハウス」は、アウグスティナー修道院からワグナー家に経営が移った1817年から1884年まで醸造所でした。訪ねたのはお昼どき、午後1時ごろです。天井はそう高くありませんが、黒々とした梁やアーチ状の柱に歴史を感じます。
グラスでゆっくり アウグスティナー
飲んだのはVollbier Hellはラガータイプで、0.5リットルです。4.2ユーロ。ビール党が最終的に行きつく究極のコク、味わい、苦みを感じます。大ジョッキであおるというよりは、グラスでゆっくりと楽しめるビールです。地元の人にアウグスティナー が愛される理由がわかります。シュバイネブラーデン(Schweinsbraten)はローストポークです。17.2ユーロ。じゃがいもだんご・クヌーデルがまたモチモチでおいしかったです。
アウグスティナー シュタムハウス(Augustiner Stammhaus)
住所:Neuhauser Str. 27, 80331 München, ドイツ
営業時間:レストラン…11:00-24:00(月-土)、11:00-23:00(日)、ビアホール…10:00-24:00(月-土)日休
URL:https://www.augustiner-restaurant.com/en/
アウグスティナー クロスタウィルツ(Augustiner Klosterwirt)
シュナイダーブロイハウスでお勧めされた2店目が「クロスタウィルツ」で、フラウエン教会のすぐ近くにあります。ここも「そろそろ出ようかな」と、だれかを待っているふうなお母さんと小学生ぐらいの子どもと相席でした。ビアホールが大人だけの場所ではないというのが、ビールの街の懐の深さでしょう。
大皿バイエルン料理盛り合わせに大満足
Dunkel0.5リットルは4.8ユーロ。アルコール分は5.6%で、濃い色をしたビールです。もうひとつは「シュタムハウス」でも飲んだ一番人気のHellです。0.5リットル4.6ユーロでした。最後はやはり、ミュンヘンの地元民に最も愛されているHellで締めるのがベストでしょう。この店を教えてくれた地元の男性曰く、「観光客は大きなジョッキでオーダーするけど、0.5リットルのグラスで飲むのがいいんだ。フレッシュなビールを数種類味わえるからね」。なるほど納得。5軒目のビアホールともなると、オーダーの仕方まで小慣れてきた気がします。
これが最後のビアホール!と奮発して頼んだ料理が、お勧めされたバイエルン料理盛り合わせ「ハウス・スペシャル」です。注文は2人からで、1人29.9ユーロ。英語ではポークナックル(Pork knuckle)、ドイツ語ではシュバイネハクセ(Ganze Schweinshaxn)になる豚すね肉ローストに、豚肩肉ロースト「ショイフェレ」(Schäufele)、仔牛のカツレツ・ウィナーシュニッツェル(Wiener Schnitzel)、ニュルンベルクソーセージがどかーんとワンプレートにのってきました。付け合わせも豪快で、じゃがいもだんご・クヌーデルにポテトサラダ、ザワークラフトでした。
59.8ユーロ。向かいの親子が「えっ⁉」と二度見するほどのボリュームでした。
バイエルンサポーター続々
訪れた当日は、地元バイエルン・ミュンヘンの試合(欧州チャンピオンズリーグ)がホームであるため、赤いユニフォーム姿のサポーターが次から次に、入ってくる入ってくる。夜の試合が待ち切れず、昼間からサッカー談義に花が咲くのはいかにもミュンヘンです。ここもかなり広いビアホールですが、巨大なホーフブロイハウスを訪れた後だったせいか、感覚がすでにおかしくなっていて、狭く感じました。
人生最高の思い出の一つになったミュンヘン・ビアホールめぐりを経験して最後に大事なアドバイスを一つ。それは、退店する前には必ず、トイレを済ませておくことです。次の目的地や滞在先までの間、ミュンヘンではほかの都市に比べてトイレ探しに苦労します。デパートやファーストフード店に駆け込むのも一手ですが、有料のところも多いので、ユーロを小銭で持っておくのがいいでしょう。1ユーロほどでカードも使えるところが多いですが、駆け込んだバーガーキングはキャッシュオンリーで泣きました。
私たちPen&Voyage編集部が実際に足を運んで取材したミュンヘン・おすすめビアホール「5選」。いかがでしたでしょうか。みなさまがミュンヘンで最高の乾杯ができますように。実際に行かれた方は感想をお寄せくださると最高にうれしいです。Danke!(ダンケ=ありがとう)
アウグスティナー クロスタウィルツ(Augustiner Klosterwirt)
住所:Augustinerstraße 1, 80331 München, ドイツ
営業時間:9:30-24:00(無休)
URL:https://www.augustiner-klosterwirt.de/
ミュンヘンへはエバー航空で
台湾大手のエバー航空は週4日、台北~ミュンヘン間を運航しています。日本には9空港に乗り入れており、欧州行きには台北乗り継ぎが安心・安全で便利です。
便名 | スケジュール | 運航 | 所要時間 |
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BR71 | 台北(TPE)23:25⇒ミュンヘン(MUC)07:20(+1日) | 月・水・金・日 | 13h55m |
BR72 | ミュンヘン(MUC)12:00⇒台北(TPE)06:35(+1日) | 月・火・木・土 | 12h35m |