バルト海に面した小さな国・ラトビアを2025年12月、旅しました。中世からドイツやスウェーデン、ロシアなどの支配を受け、20世紀には独ソに占領されながらもたくましく紡がれた文化や暮らしを取材しました。この記事では、北部にある古都ツェースィス(Cēsis)を紹介します。立ち寄った織物工房とレストランで、小さな街が育んだ洗練に出会いました。
古都ツェースィス(Cēsis)とは

首都リーガから北東へ90キロ離れたツェースィスは13世紀、ドイツ騎士団が築いたツェースィス城を中心に発展しました。現在はツェースィス地域(Cēsis Municipality)の中心で、人口は約1万5千人です。石畳の旧市街はこじんまりしていて、駐車された車がなければ13世紀から時が止まったかのような趣です。
個性のある食の生産者がサステナブルの文脈でも注目されています。案内してくれたツェースィス観光局のスィンティヤ・ワナガ(Sintija Vanaga)さんの家族は森の洞窟を利用して、ワイナリーを営んでいるそうです。「ここ20年ほどで観光地として発展しました。ハイキングやアウトドアスポーツが楽しめる場所としても、知られてきました」と話しました。
イベントも盛りだくさんです。ラトビアで最も大切な祭り「夏至祭」はもちろん、ビール祭りやスローフードの食イベント、音楽祭などが春から秋を中心に開かれています。タイミングをあわせて来るとさらに楽しめそうです。

織物工房を訪ねる


ツェースィス旧市街にある織物工房「ヴェヴェリーシャ(Vēverīšas=女性の織り手の意味)」を訪ねました。伝統の織りを守る第一人者であるダグニヤ・クプチェ(Dagnijas Kupčes)さんが主宰しています。3階の工房は所狭しと作品が並んでいました。ラトビア各地の合唱団や結婚式などで着る衣装が中心ですが、お土産向きのショールやコースター、ミトンも並んでいます。


ダグニヤさんは足踏みの織り機で実演してくれました。「カタン、カタン」。小気味よくペダルを踏みながら経糸を広げ、シャトルを手際よく滑り入れます。彼女のキャリアはなんと小学2年からです。「当時、初めて織りのグループに行くと『足がペダルに届かないから無理だ』と言われたんですよ。それでも『立って織ります』と強がって、最初の敷物は立ったままつくりました」。工芸の専門学校を卒業してからずっと民族衣装に関わってきました。「私のような職人はラトビア各地にいて、後継者を育てています」。


ラトビア伝統の柄が織り込まれたリエルワールデ帯(Lielvārdes josta)の文様は、自然の神々を表しているそうです。訪れた小さな記念にひとつ買いました。長さ90センチほどなので腰に巻くのは無理ですが、かばんにつけてお守りにしようと思います。25ユーロでした。
Weavers’ workshop “Vēverīšas”(織物工房「ヴェーヴェリーシャス」)
住所:Rīgas iela 19, Cēsis, Cēsu pilsēta, Cēsu novads, LV-4101 ラトビア
営業時間:事前予約制
公式サイト
ミシュラン・ビブグルマンの店も


ツェースィスにはミシュラン掲載店が2軒あります。そのうちの1軒「H.E. ヴァナジニス(H.E. Vanadziņš)」で夕食をとりました。「ビブグルマン」は星はないものの「価格以上の満足感が得られる料理」を出す店が対象です。

前菜の盛り合わせプレートは、レッドカラントとカシスのソースが北欧らしくて、スモークされた肉の味わいを引き立てていました。メインはラム肉にクルトン揚げに、クランベリー入りのマッシュポテトがたっぷり敷かれていました。マッシュポテトにベリーを混ぜる発想はなかったので新鮮でした。こちらも、ほんのちょっとの酸味がアクセントです。デザートのハニーケーキにもベリーが使われ、ビブグルマンらしい、てらいのないおいしさでした。

ハーブバター、スプラウトサラダⒸPen&Voyage

H.E. Vanadziņš(H.E. ヴァナジニス)
住所:Rīgas iela 15, Cēsis, Cēsu pilsēta, Cēsu novads, LV-4101 ラトビア
営業時間:17:00-22:00(金)、12:00-22:00(土・日)
公式サイト
2026年 ラトビア・ツェースィス地域(Cēsis Municipality)主なイベント
4月
・地元の名店とミシュラン選出レストランを巡る、1週間のガストロノミー・ジャーニー
・世界的に著名なラトビア人作曲家ペーテリス・ヴァスクス音楽祭
6月
・ツェースィス・アルス(Cēsu alus)ビールフェスティバル
・夏至祭(ヤーニ祭)
7月
・ラトビア最大級のヒップホップフェスティバル「Straume」
・屋外対話型フェスティバル「Lampa」
・ツェースィス市制820周年記念行事
・スローフード・ストラウペ市場 ワインフェスティバル
・ラトビア文化遺産を守る町、ヴェツピエバルガ祝祭
8月
・国際「ツェースィス・アート・フェスティバル」(7月18日〜8月30日)
・UTMB主催「ガウヤ・トレイル」ハイキングイベント(10〜100km/ガウヤ国立公園)
・スローライフ&ロングテーブルディナー「パピールファブリカス・フェスティバル」
9月
・国際チェロ音楽祭「Cello Cēsis」
・ラリー・ツェースィス
・ザウベ・ワイルドフード・フェスティバル
10月
・チリ・フェスティバル
・ヴィエンコチュ公園「ナイト・オブ・ファイア(炎の夜)」
11月
・「ツェースィス・レストラン・ウィーク」郡内レストランによる美食イベント
12月
・クリスマスマーケット
ツェースィス地域で取材したスポット
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(取材協力:ラトビア投資開発公社<LIAA>観光部、LOTポーランド航空)
ラトビア バルト三国の中央に位置する。人口180万人。面積は約6.5万km²で、九州と四国を足したぐらい。国土の半分が森林。中世からドイツやポーランド、スウェーデン、ロシアなどの支配を受け、20世紀には独ソに占領された。1991年にソ連から独立を回復。公用語はラトビア語。通貨はユーロ。
「バルト海の真珠」と呼ばれる首都リーガは13世紀からハンザ同盟に加盟し、バルト海交易の拠点として栄えた。ドイツ商人らの営みを今に伝える街並みは「リーガ歴史地区」として1997年、ユネスコ世界遺産に登録された。北緯57度はモスクワや米アラスカ州南部と同程度。人口は60万人ほどで、バルト三国では最大。







