【モンテネグロ】アドリア海の隠れた宝石・コトル探訪記

世界遺産・モンテネグロのコトル
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東欧クロアチアのドブロブニク(Dubrovnik、ドゥブロヴニクとも書く)は、太陽に煌めく青い海と旧市街の瓦屋根が織りなす美しいコントラストから「アドリア海の真珠」と称される海辺のリゾートです。2023年には120万人以上が訪れた人気の観光地ですが、近年はその混雑ぶりから、インフラの負荷増大や、物価の高騰といった「オーバーツーリズム」の弊害もたびたび取り沙汰されるようになりました。ところが、同じアドリア海の延長線上に「より落ち着いた雰囲気の穴場がある」との情報を得て、2024夏、モンテネグロの城塞都市・コトル(Kotor)を訪れました。(情報は2024年7月時点)

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「世界で最も美しい湾」中世の街いまも

旧市街のオレンジの屋根が海の色に映える
旧市街のオレンジの屋根が海の色に映える=松下写す(以下すべて)
タイムトンネルのような旧市街の入り口

「アドリア海の隠れた宝石」とも呼ばれるコトルは、ドブロブニクほどの規模ではないものの、城壁に囲まれており、同じく旧市街のオレンジと海のブルーの組み合わせが楽しめます。海の透明度は、アドリア海に直接面しているドブロブニクが勝りますが、コトル湾という入り江の奥に位置していることから波が穏やかで、泳いだり、マリンスポーツを楽しんだりするのに適しています。「世界で最も美しい湾」と呼ばれることもあり、連日クルーズ船が訪れていることからも、すでにその魅力が高く評価されていることがうかがえます。

コトルは、ドブロブニクと同じ1979年にユネスコの世界遺産に登録されました。天然の港で要塞としても優れていたため、古代ローマの時代から争奪の対象となり、ヴェネツィア共和国の時代に大きく発展を遂げました。その当時の中世の街並みが今も見事に保存されており、旧市街に一歩踏み入れただけで、異世界に紛れ込んだような錯覚を覚えます。

石段1350段てくてく、絶景へ

スクロールできます
石段の途中で犬が一休み
石段の途中で犬が一休み
要塞から見えるコトル湾の眺め
要塞から見えるコトル湾の眺め
12世紀に建てられたロマネスク建築の聖トリフォン大聖堂は町のシンボル
12世紀に建てられたロマネスク建築の聖トリフォン大聖堂は町のシンボル
ギャラリーや工芸品を扱った可愛いショップが立ち並ぶ
ギャラリーや工芸品を扱った可愛いショップが立ち並ぶ
手芸店も

観光のハイライトは、海抜280メートルの高さにあるサン・ジョバンニ要塞から眺める絶景です。ただし、この景色を拝むためには、約1350段の石段を登らなければなりません。どんなに健脚でも最低30分、ゆっくり登ると1時間以上かかるので、特に夏場は直射日光が当たらない早朝に登るのが得策です。まだ観光客の多くが寝静まっている時間帯の旧市街は、人影もなく「しん」としていて、タイムスリップしたかのような気分に浸れます。要塞に登る道には午前7時から入れますが、15ユーロかかりますので、お財布をお忘れなく。

要塞からの眺めを堪能した後は、旧市街をゆっくりと散歩してみましょう。聖トリフォン大聖堂などの建築物を愛でるのもいいですが、ただ気の向くままに小道を歩いて、目に止まったお店に立ち寄るのがコトルの散策スタイルです。迷宮のように入り組んだドブロブニクの旧市街に比べてこちらは規模が小さいので、「いずれ同じところに辿り着く」安心感があります。

ピーク外して眺めも海鮮も

このシンプルなイカのグリルは14ユーロ(2024年7月時点)
このシンプルなイカのグリルは14ユーロ
アペロールスプリッツは8ユーロ。水はこのサイズで2ユーロ(2024年7月時点)
アペロールスプリッツは8ユーロ。水はこのサイズで2ユーロ

気になるお食事事情ですが、残念ながら近年のインフレで、コトルでの飲食代は西欧の観光地とさほど変わりません。アドリア海の対面に当たるイタリアの食文化の影響を受けており、海鮮料理も楽しめます。見晴らしのいい席でゆっくりと食事をしたければ、昼食であれば午前10時台などの早い時間帯、夕食であればクルーズ船の乗客が船に戻った後の遅めの時間帯を狙うのがコツです。朝食を提供しているレストランも複数あり、お店によっては10ユーロ未満でジュースとコーヒー付きの朝食プレートが食べられます。

人口60万人の小国、いまのうちに

日本ではまだなじみが薄いと思われるコトルの情報をお届けしましたが、コロナ後、観光客が急増傾向にあるため、これ以上知名度が上がって激混みになる前に一度訪れてみることをお勧めします。今回、比較のためにドブロブニクも再訪しましたが、一周するのに1時間以上かかる城壁やその中の旧市街のスケール感と、海の美しさは圧倒的でした。ただ、とにかく人が多く、何もかも値段が高く、初めて訪れた20数年前とは様変わりしていました。実はコトルもドブロブニクと同じ道をたどりつつあります。地元の人によると、要塞への通行料は去年と比べて約2倍になったそうです。空港に待機しているタクシーはメーターを倒さず、3、4倍の値段をふっかけてくることもあります。モンテネグロは2006年にセルビア=モンテネグロから独立したばかりの、人口60万人程度の小国です。まだ発展途上である点も踏まえて検討していただければと思います。

羽田からはイスタンブール経由で

ドブロブニクとコトル、両方とも訪れたい場合は、フライト代に大差がなくて、日付があえば、空港からの距離がより近いコトルからドブロブニクに陸路で移動する順序をお勧めします。バスが毎日運行しており、所要時間は2時間程度、料金は片道25-30ユーロほどです。日本からは最寄りのチバット空港(Tivat Airport, TIV)まで、乗り継ぎ1回で着きます。調べたところ、2024年7月時点では、羽田空港発のトルコ航空(イスタンブール経由)の17時間20分が最短でしたが、予算に合わせて、欧州以外でもアジアや中東の航空会社の乗り継ぎ便が選べます。空港から旧市街まではわずか8キロなので、道が空いていればタクシーで10分程度で着きます。EU未加盟ですが、通貨はユーロを採用しており、欧州を何ヶ国か回る場合も両替の必要がなくて便利です。私はこの地域に10日ほど滞在しましたが、全く飽きませんでした。この夏の旅行先をまだ決めていないなら、ぜひコトルを候補に加えてみてはいかがでしょうか。

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