イタリアを2024年2~3月、特急「イタロ(Italo)」で旅しました。台湾経由でミラノ入りし、ヴェネチアやローマを回って再びミラノに戻る7泊10日です。オンラインでのチケット購入の仕方、乗り方、ビジネスクラスやラウンジ、駅について紹介します。
旧国鉄トレニタリアと私鉄運営のイタロ
イタリアの主な都市を結ぶ鉄道には、イタリア版JRのTRENITALIA(トレニタリア)と私鉄のItalo(イタロ)があります。トレニタリアは2000年、国鉄を引き継いで設立されました。略称は国鉄時代と同じFS(Ferrovie dello Stato)です。イタロは2012年に開業、フェラーリ社のモンテゼモロ会長(当時)らが出資したNTV社が運行する特急です。車体はフェラーリと同じ赤で、「フェラーリ特急」とも呼ばれています。
2社は線路も駅も共通で、価格はエアチケットのような変動制です。台湾大手・エバー航空ではトレニタリアと”Rail & Fly-Trenitalia”(レール&フライ-トレニタリア)として提携、航空券とともに割引チケットの購入も可能です。
イタロとトレニタリア、どっちがいい?
切符はもちろん乗車の前日や当日に駅で買えますが、オンラインで買うほうが安く、短い滞在で現地で買う時間が惜しかったので日本で予約することに。トレニタリアには「トレニタリア・パス[Trenitalia Pass]」という外国籍者専用パスがあります。大人が7日間で3回(2等)使えるパスが139ユーロで、ちょうど3回乗る予定だったため購入も検討したのですが、区間ごとに安い切符を選んで買う方がお得だと感じました。
そこでトレニタリアとイタロのサイト双方で1区間ずつ検索して結局、安かったイタロにしました。最後に乗ったローマ~ミラノは正直、たいした価格差はなかったのですが、新たにトレニタリアに登録するのが手間で、すべてイタロにしました。需要や予約時期によって価格が違うので、一概にどちらが安いとも言えません。
ミラノ⇒ヴェネチア:お得ビジネスクラスで
2時間17分
ビジネスクラス
18.9ユーロ(オンラインで6日前購入)
ミラノーヴェネチア間はプリマ・ビジネス[Prima Business]というビジネスクラスで、大人1人で18.9ユーロ、3,000円ちょいでした。かなりお得です。
しかしこの記事を書くために予約完了メールを見直したところ、行き先が”Venezia ME”となっているではありませんか。何ならチケットにはヴェネチアの文字さえなく”MESTRE”しか書いてありません。ここで気付くべきでした、ヴェネチアにはヴェネチア本島のひとつ手前にヴェネチア・メストレ駅”Venezia ME(Mestre)”、本島にはヴェネチア・サンタルチア駅”Venezia S.Lucia”があることに。
「ヴェネチアといえばサンタルチア駅(しかない)」と思い込んでいた私は、何も考えず、”vene”とまで入力したら上に表示されていたメストレ駅行きを買っていたのでした。現地では改札もないため、サンタルチア駅まで行って(行けて)しまい、ここでも買い間違えに気付かなかったのですが、これが翌日に災いしました。(下に記事が続きます)
ミラノ中央駅:荘厳な巨大ターミナル
ミラノ中央駅(Milano Centrale)はファシズム体制にあった1931年に完成しました。当時の首相・ムッソリーニの肝いりで神殿のように天井は高く、権力を誇示するかのような荘厳さに満ちています。「世界でもっとも美しい鉄道駅」と建築家・フランク・ロイド・ライトは評したそうです。
現在でもヨーロッパ有数のターミナル駅で、地下にはスーパー、ホームは2階にあります。私たちはミラノ・マルペンサ空港からミラノ中央駅までバスを利用しましたが、空港バスの発着地に「メルカート・チェントラーレ(中央市場)」という名のおしゃれなフードコートがあります。おいしくて居心地もよく、2日連続で利用しました。カプチーノは1.6ユーロ、軽めのピッツァ「ピンサ」にブレザオラ(牛の生ハム)などをはさんだサンドイッチ(Pinsa Bresaola e Cre)7.5ユーロ、合計9.1ユーロ(1,532円)でした。ピンサは大豆粉や米粉が入っていて、ちょっとカサカサした味わいです。マリトッツオは4~5ユーロだった記憶です。瓶に飾られたミモザが素敵でした。
プリマ・ビジネスでは茶菓サービスも
ホーム番号が掲示板に表示されたら、大急ぎでホームに向かいます。荷物置き場にスーツケースを納めてから指定席へ。ビジネスクラスらしく座席はゆったりしていて、ショートブレッドのようなクッキー、コーヒーとお手拭きのサービスがありました。車掌さんが切符のチェックに来ますが、スマートフォンでQRコードを見せればOKです。PDFを印刷する必要はありません(スマホの電源切れが心配なら、印刷しておいても)。
無料Wi-Fiに接続すると、雑誌や映画などエンターテインメントも楽しめるのも飛行機のようです。快適な2時間17分でした。
ヴェネチア⇒ローマ:発駅を間違えて購入
3時間48分
エコノミークラス
47.9ユーロ(オンラインで7日前購入)※発駅を誤って購入
4時間(実際には4時間20分)
エコノミークラス
56.5ユーロ(駅の窓口で当日購入。このほかラウンジ使用料5ユーロ)
ヴェネチアからローマへは「スマート」というエコノミークラスを購入していました。大人1人47.9ユーロ(8,030円)でした。距離は400kmほど、所要3時間48分なので、東京~京都を新幹線「こだま」で行くのと同じような距離・時間になります。東京~京都の「こだま」料金は自由席で13,320円なので、価格はこのユーロ高でも安いですね。
ところが失敗しました。駅名を間違えて購入していたのです。サンタルチア駅に着いてホームはどこか、表示を待ちました。でも10時10分を過ぎても、めざす列車番号「8902」が現れません。遅れているのかな、とイタロの窓口に行くと「あー」という顏をされ、発駅が違うと指摘されました。「ME」、メストレ駅発を買っていたのでした。サンタルチア駅とメストレ駅は一駅ですが、いまからでは間に合いません。
ヴェネチア・サンタルチア駅で買い直す
発車したあとのためか「返金できない」と言われ、新たに買い直すしかありませんでした。買い直したチケットは2人でエコノミー123ユーロ(20,752円)でした。なぜかヴェネチア・サンタルチア駅でのラウンジ使用料(2人で10ユーロ)も込みにされていました。「ラウンジも使う?」と訊いてくれていたのかもしれませんが、慌てていて気付きませんでした。「イタロ・クラブ」という名前のラウンジにはソファ席とラウンジ専用のWi-Fi、スナックやドリンクのサーバーもありました。
ヴェネチア・サンタルチア駅は1階だけですが、フォカッチャやパニーニ店、持ち帰り寿司の店もありました。トイレは有料(1ユーロ)で、ホームに向かって右側にありました。
掲示板でホームを確認し、乗車しました。列車そのものも少しずつ遅れ、車内モニターに表示されました。結局20分ほど遅れ、ローマには当初の予定より1時間20分ほど遅れて到着しました。教訓として、当たり前ですが駅名も料金も、しっかり確認しましょう。
ローマ⇒ミラノ、3時間10分45.9ユーロ
3時間10分
エコノミークラス
45.9ユーロ(オンラインで9日前購入)
エコノミークラスで1人45.9ユーロ、7,734円でした。当日だと1人100ユーロ以上になるので、かなりお得なチケットだと思います。ちなみに乗った3区間とも、無料Wi-Fiがストレスなく使えました。
ローマ・テルミニ駅:2階にフードコート
ローマ・テルミニ駅はイタリア最大の駅で、1日の乗客数は約48万人です。外観はシンプルで、ミラノ中央駅のような重厚さは感じません。1階がホーム、2階はフードコート、地下はショッピング街で地下鉄とつながっています。ホームに入るには自動改札機がありましたが、壊れているものもありました。
出発まで時間があったので、2階にあるフォカッチャ店”Antica Focacceria San Francesco Roma”で朝食にしました。コーヒーとクリーム入りクロワッサン×2人分で8.4ユーロ(1,424円)でした。
要注意:ホーム案内、ストライキ、遅延
イタリアに限らず(知る限り)欧州の鉄道ではおおむね、出発するホームは10分~15分前でないと分かりません。掲示板の前に陣取ってめざす列車番号に目をこらし、ホーム番号が現れるや否や急いで向かいます。日本のように「3号車はココに立って」と示すガイド線も表示もないので、車両番号を横目で見ながら自分の車両をめざして進みます。遅れることもあるので、余裕を持った日程を組んだほうが無難です。
さらにストライキも起こります。イタリアに限らず、欧州を旅していると空の旅と同様、遭遇することがあります。30代でパリに住み、最初に覚えたフランス語は”grève”(ストライキ)でした。イタリア語だと”sciopero”です。日本へ帰国する当日の長距離移動は、陸でも空でもしないほうがいいでしょう。