海外出張や家族旅行でSTAR ALLIANCE(スターアライアンス)のロゴが入口に掲げられたラウンジを利用したことがある人は多いでしょう。でも、そのほとんどが、ANA(全日本空輸)やエバー航空をはじめ、ユナイテッド航空、ルフトハンザ航空、シンガポール航空、タイ航空、アシアナ航空など27の加盟航空会社が運営するラウンジです。
世界のベストラウンジ
そんな「スタアラ」加盟航空会社のラウンジは世界各地に1,000か所以上ありますが、スターアライアンスが直営する「スターアライアンス」ブランドの専用ラウンジをご存知でしょうか。これらはかなり特別です。ブエノスアイレス(EZE)、ロサンゼルス(LAX)、リオデジャネイロ(GIG)、ローマ(FCO)、アムステルダム(AMS)、そしてパリ(CDG)。2024年9月現在、世界に6つしかありません。今回はそんな希少な「スタアラ」ブランドラウンジの中でも最も新しく、世界の航空格付け会社スカイトラックス社の2024年の世界のベストラウンジに選ばれたパリ・シャルルドゴール空港のラウンジをレポートします。
ターミナル1の3階、2023年10月に開設
パリは年間約4400万人の観光客が訪れる世界トップクラスの観光都市。シャルルドゴール空港のスターアライアンスラウンジは、さらに多くの関係者や観光客をもてなすためにパリ五輪・パラリンピックの前年、2023年10月13日にターミナル1の3階にオープンしました。もともとシャルルドゴール空港にはターミナル1の10階にスターアライアンスラウンジがあり、当初は空港内に2つ目、世界に7つ目の「スタ―アライアンスラウンジ」が完成したと紹介されました。
しかし、現在は古い10階のラウンジは閉鎖され、2024年8月現在は3階の新ラウンジに統合されています。約1,300平方メートルの広々とした新ラウンジには、300人以上が入場可能です。屋外にはテラス席もあります。
このラウンジは、スターアライアンス ゴールドステータス会員、加盟航空会社の国際線ファーストクラスまたはビジネスクラスの搭乗客が利用できます。私が訪れたのは2024年8月9日午前、パリ五輪を取材した帰り、シャルルドゴール空港11時20分発、台北・桃園空港行きのエバー航空BR88便の待ち時間でした。
免税店を抜け、エレベーターで3階へ
シャルルドゴール空港のスターアライアンスラウンジへの行き方を解説します。この新しいラウンジはターミナル1の出国審査とセキュリティチェックを通過した後にあります。シェンゲン圏外への乗客専用です。出国手続きを済ませたら、広い出発ホールを右へ向かいます。
免税店エリアのROLEXやGIVENCHYの付近にエレベーターがあり、それに乗って3階に上がります。見上げると小さな「Lounge/貴賓室」のサインがありますが、あまり目立たず、ラウンジの収容人数約300人に対してエレベーターは2機しかないので、しばらく待つ可能性があります。私自身も行列ができていたエレベーターにすぐ乗れず、何台か乗り過ごしました。
スターアライアンスラウンジは毎日午前6時から午後10時半まで営業しています。私が訪れた午前10時台はそれほど混雑していませんでした。屋根がついた半屋外の喫煙所がラウンジに併設されていて、スモーカーには便利です。
高級感あふれるデザイン
結論から言えば、これまで私が訪れた中で最も居心地がいいラウンジの一つでした。まず、スタイリッシュな装飾と高級感のあるデザインが目を引きます。
同じく、世界のベストラウンジの受賞歴のあるスターアライアンスのロサンゼルス(LAX)空港ラウンジも設計した大手建築事務所ゲンスラーがデザインを担当しています。
食事をする、仕事をする、くつろぐといった機能だけでなく、調度品やアート、ファーニチャー(家具)にいたるまで「芸術の都」パリの世界観、雰囲気がギュッと詰まった洗練された空間です。旅の終わりのフライトを待つ間、「またパリにもどってきたい」と思わせるストーリー性も感じました。
私が訪れた期間はちょうどパリ五輪が開催されていたため、滑走路が一望できる窓際には、プールに飛び込もうとしている競泳選手やつり輪の体操選手、ボールを指で回すバスケットボール選手などをモチーフとしたリアルな装飾があり、五輪ムードを演出していました。思わず写真を撮ってXやInstagramにアップしたくなる工夫です。2週間に渡った五輪取材の思い出が蘇ります。エンターテインメント精神、遊び心も抜群です。
ワイン好きにはたまらない
食事と飲み物はセルフサービスですが、このスターアライアンスラウンジのハイライトは何といってもワインです。ラウンジに入ると、すぐにバーエリアがあり、右折してさらに進むと、大きなワインセラーに囲まれた別のワインルームがあります。セレクションはこれまで訪れたどのラウンジよりも多く、ラグビーのフランス代表だったジェラール・ベルトラン氏がオーナーの南仏ワイン「GERARD BERTRAND(ジェラール・ベルトラン)」もしっかりありました。赤ワインとハム、クロワッサンの組み合わせは、それはもう最高でした。
正直いうと、この居心地がいいラウンジにはあと1時間でも、2時間でも長居したかったのですが、この日はパリ五輪に訪れた観光客の出国ラッシュと重なり、出国審査やセキュリティーチェックが混み合って時間をロスしました。滞在できたのは30分弱。シャルルドゴール空港ターミナル1のスターアライアンスラウンジを利用できるステータスを保持している場合は、余裕を持って早めに来場されることをお勧めします。
スタッフがもっといればベター
パリのスターアライアンスラウンジは上質な空間だけに、もったいないなあと感じた課題も見えました。ラウンジ内のオペレーションです。300人が収容できる広さの割に、スタッフが入退場口と、ワインバーに数人いるだけで、少なすぎると感じました。そのため、本来はきれいに盛り付けられているはずのチーズが崩れていたり、食べたかったプレーンのドーナツが補給されていなかったり、食べ残しと食器がカウンターに長時間放置されていたり。この点だけが少し残念に感じました。
パリ・シャルルドゴール空港 パリの北東23キロに位置する国際空港。所在の地名からロワシー(Roissy)とも呼ばれる。ターミナル1はスターアライアンスの航空会社、ターミナル2にエールフランスやJAL、ターミナル3は格安航空会社などが発着。日本からの直行便はJAL、ANA、エールフランスが就航。空港コードはCDG。空港とパリ中心部はRER(鉄道)で約30分。
エバー航空パリ=台北便は毎日直行
便名 | スケジュール | 運航 | 所要時間 |
---|---|---|---|
BR87 | 台北(TPE)23:30⇒パリ(CDG)07:55(+1日) | 毎日 | 14h25m |
BR88 | パリ(CDG)11:20⇒台北(TPE)07:10(+1日) | 毎日 | 13h50m |
取材協力・エバー航空
台湾大手のフルサービスエアライン。海運会社を基盤に1989年、台湾初の民間国際航空会社として設立された。2024年3月現在で世界60都市以上に就航する。航空業界の格付け会社スカイトラックス(本社・ロンドン)が認定する「世界の5つ星航空会社」10社のうちの1社で、2024年にも9年連続で選ばれた。日本路線は2024年12月、就航30周年を迎える。2024年3月現在、札幌・仙台・成田・羽田・小松・関空・松山・福岡・沖縄の9空港に就航。2レターコードはBR。英語では「イー・ヴィ・エー(EVA)」と発音される。航空連合スターアライアンスの一員。