バルト海に面した小さな国・ラトビアを2025年12月、旅しました。中世からドイツやスウェーデン、ロシアなどの支配を受け、20世紀には独ソに占領されながらもたくましく紡がれた文化や暮らしを取材しました。この記事では、首都リーガにある国会図書館を紹介します。広く静かな館内を歩くと、言葉を紡ぐ思いが伝わってきます。
ゆったりスペース、450万点

現在の図書館は2014年、建築家グンナー・ビルケルツの設計により完成しました。ダウガワ川左岸のほとりに立つ斬新な三角形は、対岸に見える旧市街とは好対照です。愛称は「光の城(Castle of Light)」。他国に何度も占領された苦難を超えて、知と言葉こそが社会を照らす光であるというラトビアの価値観が、この名に込められています。
館内は地下1階から11階まで、分野別の閲覧室や研究センターで構成され、各階で企画展が開かれています。通路も閲覧室も、階段まで広々としています。ゆったりとした空間設計がうらやましくなるほどです。保存されている資料は約450万点にのぼります。

人々の書架(The People’s Bookshelf)

吹き抜けのアトリウムに立つと目に飛び込むのが、5階分を貫く壁面いっぱいの書架です。「人々の書架(The People’s Bookshelf)」で、寄付された8000冊が並んでいます。開館を記念して市民1万4千人が、書籍をバケツリレー方式で旧館から運んだそうです。下から仰ぎ見ても上から見下ろしても圧巻で、迫力がありました。

日本語コーナーも

M階にある東アジアセクションに、日本語の本や漫画がありました。「『のだめ』ありますね」などと同行の仲間と話していると、「日本の方ですか」と流ちょうな日本語で声をかけられました。上級書誌学専門員のオレグス・ピシュチコヴス(Olegs Piščīkovs)さんでした。私が大阪・関西万博の仕事で知り合ったラトビア投資開発庁(LIAA)担当者の名前を告げると「ああ、元の同僚です」とあっさり返されました。なかなか担当者にたどり着かない国とは違い、すぐに話が通じるのはラトビアの強みですね。

世界の記憶「民謡の戸棚」

ユネスコが主催する「世界の記憶」に2001年、登録された「民謡の戸棚(Dainu skapis(ダイヌ・スカピス)」が5階にあります。「民謡の父」と呼ばれるラトビアの文学者・クリシュヤーニス・バロンス(Krišjānis Barons)が1880年に作成、約21万8千編のラトビア民謡(ダイナ)が収められています。民謡はラトビアの人々にとって「アイデンティティの核」、大切にされています。

高さ160cm、幅66cmのオーク材のキャビネットには70個の引き出しがあり、3x11cmの小さな紙片に手書きの歌詞が収納されています。

自由は1冊の本から始まる

フロアごとに気合の入った博物館並みの展示がありました。5階では「“Freedom Begins with a Book”(自由は一冊の本から始まる)」とのタイトルの企画展が開かれていました。「ラトビア語とリヴォニア語で最初の書籍が出版されて500年」を記念して、19世紀の料理レシピやカレンダー、子ども向け読み書き教育法などをパネルと映像で伝えています。英語の解説もしっかりあり「本は、いまも社会を動かしているか」との問いを来館者に投げかけます。

入館について


まずはクロークで番号札と引き換えに上着を預けます。バッグはロッカーに預けますが、1ユーロ硬貨がカギを閉めるのに必要です。館内に持ち込みたいものは貸し出してくれる透明バッグにしまいます。水(ペットボトル)やノートPC・スマートフォン・筆記用具などは持ち込みOKですが、傘や食べ物・飲み物、音の出る機器、フラッシュ撮影はNGです。準備を終えてからウェルカムデスクで見学したい旨を告げると、来館者カードを渡されます。


本好き、図書館好きならラトビア語が分からなくても、本の放つ力や豊かな空間が楽しめるはずです。無料なので、観光の合間に休みがてら立ち寄るのもいいですね。

私たちは新市街からライドシェア「Bolt(ボルト)」を利用しました。4キロ9分の乗車で4.8ユーロ(約880円)でした。
(取材協力:ラトビア投資開発公社<LIAA>観光部、LOTポーランド航空)
ラトビア国立図書館(National Library of Latvia)
住所:Mūkusalas iela 3, Zemgales priekšpilsēta, Rīga, LV-1423 ラトビア
営業時間:10:00-20:00(月~金、Levels 1–3)、11.00–19.00(月~金、Levels 4–7)、11.00–18.00(土、一部除く)日祝は休み
入場:無料
公式サイト
ラトビア バルト三国の中央に位置する。人口180万人。面積は約6.5万km²で、九州と四国を足したぐらい。国土の半分が森林。中世からドイツやポーランド、スウェーデン、ロシアなどの支配を受け、20世紀には独ソに占領された。1991年にソ連から独立を回復。公用語はラトビア語。通貨はユーロ。
「バルト海の真珠」と呼ばれる首都リーガは13世紀からハンザ同盟に加盟し、バルト海交易の拠点として栄えた。ドイツ商人らの営みを今に伝える街並みは「リーガ歴史地区」として1997年、ユネスコ世界遺産に登録された。北緯57度はモスクワや米アラスカ州南部と同程度。人口は60万人ほどで、バルト三国では最大。







