バルト海に面した小さな国・ラトビアを2025年12月、旅しました。中世からドイツやスウェーデン、ロシアなどの支配を受け、20世紀には独ソに占領されながらもたくましく紡がれた文化や暮らしを取材しました。この記事では、世界中で愛されるラトビア発のボタニカルキャンドル「ザ・ムニオ(the MUNIO)」を紹介します。首都リーガのスタジオでワークショップに参加、自然が暮らしに溶け込む世界観に触れました。
the MUNIOとは

MUNIO(ムニオ)とはラテン語で「要塞を築く」「守る」といった意味です。創業者のエリナ・ツィーマ(Elina Cima)さんはキャンドルの香りを通して「自分の感情を守る強い状態」をつくりたいという思いを、ブランド名に込めています。きっかけは2007年、営んでいたカフェに置くため、自分のキッチンで大豆由来のキャンドルをつくったことです。「石油由来のパラフィンより長くもつので、カフェにとって理想的でした」。以来ずっと植物性ワックスをベースに、自然を再現した香料と、森のハーブや花を用いて製品をつくっています。

「私はラトビアの自然の中で育ちました。苔、ジュニパー、ヒース、花、ハーブ。これらは私にとってただの植物ではありません。記憶であり、感情であり、時間そのもの」とエリナさんは話します。今でも森に入って植物を自分たちで摘んでいます。機械はワックスを液体にする溶解ポットだけで、他はすべて手作業です。
90%が輸出向け

2008年の創業当初から海外展開が前提だったといいます。「ラトビアは市場が小さいとすぐに分かり、2009年にはパリ、東京、ニューヨーク、フランクフルトの展示会に出展しました」。日本への進出は早く、2009年からです。家具チェーンACTUS(アクタス)のオンラインストアなどで手に入ります。

2019年にはボディオイルやローションなどスキンケア製品づくりも始めました。現在は欧米や日本、韓国などのデザインショップへの卸販売が中心です。「プロダクトの約90%が輸出向けです」とエリナさん。アトリエを兼ねた首都リーガの直営スタジオは2024年、オープンしました。ベルリンにもスタジオがあり、ヨーロッパ各地に広げていく計画です。


スタジオで小さな香りづくり

スタジオでワークショップに参加しました。「まずお茶はいかがですか。リンデン(菩提樹)フラワー、ワイルドフラワー、フォレストベリーがあります」。ガラスのドリッパーが美しい色をたたえています。ラトビアを代表する木であるリンデンフラワーティーをいただきました。さわやかな香りです。お茶と同じ素材をキャンドルなどの製品にも使っているそうです。

ワークショップでは、コイン型の「ワックスサシェ」を作ります。芯はなく、火をつけずに香りが広がります。専用ウ.ォーマーもあり、上に置くと10分ほどで溶け、より強い芳香が楽しめます。


席にはひとりずつ2種類の型とビーカーが用意されていました。箱にはたっぷりハーブや花々が詰まっています。苔、ナナカマドの葉、ヒースの花、マリーゴールド、リモニウム、森で採れたベリー類です。
まず型に花やハーブを入れます。「ルールはありません」。香りを出すのはワックスで、花やハーブは「飾り」です。入れるだけよい香りがする、というわけではないのですが、ついつい欲張って盛ってしまいます。私は混ぜるのではなく、1つの型に1種類ずつにしました。

香料入りワックスを注いで完成

次に計量カップに熱いワックスを150ml入れます。ワックスは大豆と菜種、2種類の植物性ワックスです。
安全基準に基づいた香料は、白い花とリンゴの花の香りのブレンドです。「日本の桜のように、ラトビアではリンゴの花がポピュラーです。香りは、甘さとフレッシュさがあり、多くのラトビア人に愛されている香りなので、今日はこれを選びました」。ワックスに香料を入れて15秒ほど混ぜてから型から注ぎ、縁まで満たしました。


ワークショップはキャンドルのお土産つきです。直径8cm、高さ10cm、燃焼時間は約50時間で、長く楽しめそうです。苔やローズ、リンデンフラワー、ヒース、ラベンダー、フォレストベリーなどがありますが、世界中で一番人気なのはワイルドフラワーだそうです。発祥の地ラトビアでの一番はジュニパーです。どれにしようか選んでいるうちにワックスが白くなり、20分ほどで固まりました。


自分の手づくり…というのはおこがましいほど簡単でしたが、やってみるかみないかでは大違いです。店の製品と同じ、環境負荷の低い紙箱に詰めれば完成です。結構ぎゅうぎゅうで、ふたをするのに苦労しました。いかに植物を欲張って入れたかが分かりました。

お茶を味わい、説明を聞き、ハーブをさわり、香りを楽しむ。五感で世界観に触れ、MUNIOの名に込めた芯の強さ、揺るぎなさを感じました。
(取材協力:ラトビア投資開発公社<LIAA>観光部、LOTポーランド航空)
The MUNIO(ザ・ムニオ)
住所:Tērbatas iela 36, Centra rajons, Rīga, LV-1011 ラトビア
営業時間:10:00-18:00(日曜休)
ワークショップ参加費:40ユーロ(20ユーロのクラスも)
オンラインストア
ワークショップ申込
ラトビア バルト三国の中央に位置する。人口180万人。面積は約6.5万km²で、九州と四国を足したぐらい。国土の半分が森林。中世からドイツやポーランド、スウェーデン、ロシアなどの支配を受け、20世紀には独ソに占領された。1991年にソ連から独立を回復。公用語はラトビア語。通貨はユーロ。
「バルト海の真珠」と呼ばれる首都リーガは13世紀からハンザ同盟に加盟し、バルト海交易の拠点として栄えた。ドイツ商人らの営みを今に伝える街並みは「リーガ歴史地区」として1997年、ユネスコ世界遺産に登録された。北緯57度はモスクワや米アラスカ州南部と同程度。人口は60万人ほどで、バルト三国では最大。







