【オランダ】「自転車大国」国民1人当たり1.3台。ロッテルダムで実感

ロッテルダム市内でⒸPen&Voyage
ロッテルダム市内で©Pen&Voyage
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2025年冬に約2週間滞在したオランダ第2の都市ロッテルダムで驚かされたことがある。それは、街中を自転車で行き交う人の多さだ。オランダは国民1人あたりの自転車保有台数が世界で最も高い「自転車大国」。街の移動手段の主役は車でも、バイクでも、徒歩でもなく、自転車なのだ。人口67万人の街ロッテルダムで取材したオランダの自転車事情をリポートする。

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自転車普及率、日本の倍

ロッテルダム・Zuidplein(ザイドプライン)駅前の広大な駐輪場©Pen&Voyage
ロッテルダム・Zuidplein(ザイドプライン)駅前の広大な駐輪場©Pen&Voyage

興味深いデータがある。オランダは総人口約1,800万人に対し、自転車の数が約2,200 〜 2,410万台だという。国民の人口よりも自転車の数が多い世界で唯一の国、それがオランダだ。1人あたりでいうと1.1台〜1.3台所有している計算で、ドイツ(約0.8台)やデンマーク(約0.8台)を抑えて断トツの世界1位だ。日本は1人あたり約0.6台程度(2人に1人強)というから、オランダの普及率は日本の約2倍に相当する。なぜ自転車がこれほど普及しているのだろうか。

最高地点320m どこまでも平地

国土の多くが海抜ゼロメートル以下で、最高地点でも約320mと極めて平坦な地勢がオランダの特徴だ。欧州最大の貿易港があることでも知られるロッテルダムの街を歩いても、その「フラットさ」を実感する。毎年4月に行われるロッテルダム・マラソンはその平坦なコースゆえ、かつて男女とも世界記録が生まれたコースだ。ドイツのベルリン・マラソンと並んで世界屈指の「高速コース」として名をはせる。そのどこまで行っても平らな国土という地理的条件が、機動力に優れる自転車には優しく、体力を使わずに自転車を漕げる環境にぴったりなのだ。荷物や子どもを載せるために自転車にコンテナが付いた「バクフィーツ(Bakfiets)」もよく見かける。

ロッテルダムではポストお郵便物集荷ももちろん自転車で©Pen&Voyage
ロッテルダムではポストお郵便物集荷ももちろん自転車で©Pen&Voyage
オランダで大人気のコンテナ+自転車式のカーゴバイクの一種、バクフィーツ©Pen&Voyage
オランダで大人気のコンテナ+自転車式のカーゴバイクの一種、バクフィーツ©Pen&Voyage

全土に専用道路

そんなロッテルダム市内には、自転車のためのインフラが整っている。車道とは完全に分離され、しかも歩道より幅広の自転車専用道路が街中に整備されているのだ。これはロッテルダムに限ったことではなく、オランダ全土には35,000km以上の自転車専用道路が張り巡らされている。信号も自転車専用があり、世界最大級の駐輪場が駅前など全国にある。

ロッテルダム市内の自転車専用道路©Pen&Voyage
ロッテルダム市内の自転車専用道路©Pen&Voyage

これらは、1970年代の交通事故増加や石油危機をきっかけに、車優先から自転車優先の街づくりへ転換した国策によるものだ。2010年から2024年まで14年間にわたり首相を務めたマルク・ルッテ前首相(現NATO事務総長)は「健康的で、環境への負荷も少ないから」という理由で、重々しい警護車両を使わずに、一市民のように首相官邸から自転車通勤し、国王に謁見する際にも宮殿に自転車で乗りつけて世界で話題になった。ルッテ氏の自転車通勤は、単なる趣味ではなく、オランダの平等主義や実用主義を体現する象徴的なスタイルとして親しまれた。

在米オランダ大使館の公式Xより(2019年)

電車や地下鉄 そのままOK

オランダ鉄道(NS)で自転車を持ち込める専用車両©Pen&Voyage
オランダ鉄道(NS)で自転車を持ち込める専用車両©Pen&Voyage
アムステルダム-ロッテルダムを結ぶオランダ鉄道(NS)に自転車を持ち込む乗客©Pen&Voyage
アムステルダム-ロッテルダムを結ぶオランダ鉄道(NS)に自転車を持ち込む乗客©Pen&Voyage

鉄道や地下鉄の公共交通機関と自転車の相性も抜群だ。オランダ鉄道(NS)では、専用車両に自転車をそのまま折りたたまずに持ち込むことができる。ラッシュ時を除き、自転車は追加料金(約6ユーロ)で車両に持ち込める。駅には数千台規模の駐輪場が整備され、「自宅から駅、駅から目的地」までを一貫して自転車で移動できる環境が整っていることもオランダで自転車が普及している一因だろう。

ロッテルダムの地下鉄(RET)にも自転車が無料で持ち込める。「自転車マーク」のステッカーがある専用のドアから乗り込み、車内の指定スペースに置くのがルール。1つの入り口につき最大2台までとされている。完全に折りたためるタイプも手荷物扱いでもちろん無料だ。

地下鉄に自転車を持ち込む人©Pen&Voyage
地下鉄に自転車を持ち込む乗客©Pen&Voyage

自転車競技で世界トップ

日常的に自転車に親しむ環境は、世界トップレベルのアスリート育成にも繋がっている。オランダはスポーツとしての自転車大国でもあるのだ。2024年パリ五輪の自転車トラック競技の男子チームスプリントではオランダが世界新記録で金メダルを獲得した。男子ケイリン決勝で金メダルに輝いたハリー・ラブレイセンを筆頭にオランダは、絶対的な王者を輩出し続けている。女子ロードレースでもオランダは「最強軍団」と言われ、五輪や世界選手権では常にメダル争いの中心にいる。

ハリー・ラブレイセンの公式Instagramより

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