バルト海に面した小さな国・ラトビアを2025年12月、旅しました。中世からドイツやスウェーデン、ロシアなどの支配を受け、20世紀には独ソに占領されながらも紡がれた文化や暮らしを取材しました。この記事では、古都ツェースィス(Cēsis)にあるヴァイキング時代の「湖上住居遺跡群」を紹介します。アーライシ(Āraiši)では水中にあった集落の遺構や出土品をもとに、住居群を復元しています。現地を訪ねると「要塞」「城」のイメージとはまったく違い、湖を天然の「お堀」にして敵から身を守った、1000年以上前の生活の知恵に触れました。
「ラトビア」の由来・ラトガリ族の住居

「アーライシ湖上住居遺跡群」はヴァイキング時代(9〜11世紀)の要塞化した湖上集落を復元した、ヨーロッパ唯一の施設です。湖の中にある島々で暮らしていたのは古代ラトガリ族です。他の民族など敵から身を守るため、この地方に多くある湖に木材や葦などを使って家を建てました。ちなみに「ラトビア」という国名はラトガリ族に由来しているとの説があります。

考古学者ヤーニス・アペルス(Jānis Apals)らが地元住民の話や湖城にまつわる伝承をもとに、1965年から1979年にかけて大規模な発掘調査を行いました。地面は湿っていて柔らかいため、家は「水浸しになっては建て直し」が繰り返されました。住居跡は今も湖の中に沈んで残っています。

湿地のため木材や土器などがいい状態で保存されており、明らかになったデータに基づき、湖上に家屋が復元されました。約10〜30平方メートルほどの天井の低い建物です。当時の人々は現代より小柄で、また熱を逃がさず暖を取りやすくするために入口を小さくしたことが理由と考えられています。1つの家に3世代が住んでいたと聞いて、小さく並んだ家で、体が小さいにせよ、肩を寄せて暮らしていたんだな…と当時に思いをはせました。

身長165センチの私もかがんで中に入りました。家には「かまど」があり、暖房や採光、調理の役割を果たしていました。

青銅製の飾り身に着け

ビジターセンターでは白樺の樹皮製品や土製品、鉄や青銅の遺物を展示しています。湖で暮らしていた当時の姿をしたガイドが案内してくれました。ラトガリ族は自身の豊かさを示す青銅製の装身具を身に着けていました。青銅はラトビアにはないので、琥珀、蜜蝋やビーバーの毛皮などと交換する交易で手に入れました。

家族で暮らし、それぞれの仕事に「職人」がいました。ある人は樹皮で容器を作り、別の人は粘土で器を作るといった具合です。湖城近くには装身具職人もいました。

ハチミツを採るための道具「ヅェイニス(dzeinis)」は多く見つかっています。樹木の高い位置にあるハチの巣に近づくため、枝や板状の足場に座って作業し、空洞からハチミツを取り出したのです。この方法は19世紀まで続いたそうです。
発掘調査から、アーライシ湖城は火災によって失われた可能性が高いことが分かっています。再び人々が戻らなかった背景には、当時の湖水位の変化が影響したとも考えられています。火災の原因は特定されていません。
湖畔のビジターセンターを出るころは真っ暗で、そのままヴァイキング時代に連れて行かれそうなほどの静けさに満ちていました。
同じツェースィス地域にあるミシュラングリーンスターのレストラン「パワール・マーヤ(Pavāru māja)」や、ソビエト秘密地下壕を回るコースのひとつとして、自然や歴史が好きな人にお勧めします。
(取材協力:ラトビア投資開発公社<LIAA>観光部、LOTポーランド航空)
アーライシ湖上住居遺跡群
住所:arheoloģiskais parks, Āraiši, Drabešu pagasts, Cēsu novads, LV-4101 ラトビア
営業時間:9:00~17:00(水~土)、10:00~16:00(日)
入場料:大人5ユーロ、学生4ユーロ
公式サイト
2026年 ラトビア・ツェースィス地域(Cēsis Municipality)主なイベント
4月
・地元の名店とミシュラン選出レストランを巡る、1週間のガストロノミー・ジャーニー
・世界的に著名なラトビア人作曲家ペーテリス・ヴァスクス音楽祭
6月
・ツェースィス・アルス(Cēsu alus)ビールフェスティバル
・夏至祭(ヤーニ祭)
7月
・ラトビア最大級のヒップホップフェスティバル「Straume」
・屋外対話型フェスティバル「Lampa」
・ツェースィス市制820周年記念行事
・スローフード・ストラウペ市場 ワインフェスティバル
・ラトビア文化遺産を守る町、ヴェツピエバルガ祝祭
8月
・国際「ツェースィス・アート・フェスティバル」(7月18日〜8月30日)
・UTMB主催「ガウヤ・トレイル」ハイキングイベント(10〜100km/ガウヤ国立公園)
・スローライフ&ロングテーブルディナー「パピールファブリカス・フェスティバル」
9月
・国際チェロ音楽祭「Cello Cēsis」
・ラリー・ツェースィス
・ザウベ・ワイルドフード・フェスティバル
10月
・チリ・フェスティバル
・ヴィエンコチュ公園「ナイト・オブ・ファイア(炎の夜)」
11月
・「ツェースィス・レストラン・ウィーク」郡内レストランによる美食イベント
12月
・クリスマスマーケット
ツェースィス地域で取材したスポット
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