バルト海に面した小さな国・ラトビアを2025年12月、旅しました。中世からドイツやスウェーデン、ロシアなどの支配を受けながらも、紡がれた文化や暮らしを取材しました。ラトビアは2023年、レストランガイド「ミシュラン」で初の一つ星を獲得するなど、美食の国として頭角を表しつつあります。この記事では、首都リーガのレストラン3軒を紹介します。ラトビアとアジアのフュージョン、ナチュラルな個性派、眺めがよい王道。いずれも地元の素材や食文化を軸に新しい手法も取り入れ、日本人の味覚にもなじみます。とりわけシーフードの豊富さと、酸味の奥深さが印象的でした。
ミシュラン掲載「Māsa(マーサ)」アジアとモダンの風

ミシュランガイドのラトビア版第3刷となる2026年版では、34軒が掲載されています。このうち首都リーガにある2軒が一つ星を獲得しました。手ごろに楽しめるビブグルマンには5軒が選ばれ、「マサ」はそのうちの1軒です。
場所はリーガ新市街のアール・ヌーヴォー建築が並ぶエリアです。1900年代の華やかな建築群を観た後に立ち寄ってもいいですね。店名はラトビア語で「Sister(シスター)」との意味で、隣にあるグルテンフリーのベーカリー「Better Bread(ベター・ブレッド)」とオーナーが同じで、後からオープンした「マサ」はベーカリーの「妹」というわけです。


壁にはデンマークのアーティストが描いた招き猫が飾られ、ちょっとアジアの空気も感じられます。メニューには原産地や仕入れ業者が記載されていました。魚は「ラトビア・カルテネ産」牛肉は「ラトビア・ウアグレ産」などで、地元産へのこだわりがうかがえました。

前菜は気軽にシェア


Fresh trout with berry ponzu, citrus, herbs & cold-pressed virgin oilⒸPen&Voyage
前菜はシェアできるのがいいですね。レバーパテにサワーチェリーのソースが新鮮です。トラウトのベリーポン酢もジューシーです。千切りの菊芋サラダは一瞬、エノキダケかと思いました。酸味が効いた皿が多かったのですが、味わいやテクスチャーが異なるので単調ではありません。牛(イチボ)のタルタルはチーズがたっぷりかかっていて、自家製のパンがすすみました。




メイン:牛ほほ肉とポレンタ
メーンは8種類あって悩みましたが、牛ほほ肉とポレンタを選びました。ポレンタが濃厚なコーンスープのようです。お肉はとろける柔らかさでした。海外だと塩加減がきつく感じることもありますが、薄すぎず辛すぎず、バランスのとれた味わいでした。





デザート:そば粉のハニーケーキ

デザートはそば粉のハニーケーキを選びました。ヴァニラサワークリームとキャラメルソースがストライプ状にかかっています。食後としては少しヘビーでしたがヘーゼルナッツが香ばしく、私は好きな味です。ラトビアらしいヴァニラサワークリームが効いていました。
どの料理も土地の素材をいかし、アップデートして整えた印象です。ラトビアの伝統に根ざした発酵や酸味、燻製を起点にしながらポン酢やハリッサなどアジアやマグレブなど新しい味覚を取り入れ、輪郭のある味わいにしていたのが印象的でした。

Māsa restaurant(マーサ)
営業時間:12:00-22:00(月~水、日)12:00-23:00(木~土)
住所:Dzirnavu iela 31, Centra rajons, Rīga, LV-1010 ラトビア
公式サイト
旧市街ど真ん中「Baltā Kaza(バルター・カザ)」


「バルター・カザ(Baltā Kaza)」は眺めのよい聖ペテロ教会のすぐ近くです。旧市街ど真ん中、散策中にちょうどいい立地です。店名はラトビア語で「白いヤギ」の意味です。その名の通り、店のエントランスに飾られた白ヤギ(のオブジェ)が客を歓迎しています。テラス席も20席はあり、中世の建築を眺めながら食事を楽しめます。
店内はアースカラーでまとめられていて、照明は和紙のような素朴な風合いです。食器も粉引のような白い器や職人の手仕事による木の器で、和食にもあいそうです。買うこともできます。


前菜:牛のタルタル

前菜、メイン、デザートから一品ずつ選び、65ユーロのコースでした。前菜では牛のタルタルを選びました。日本ではユッケなど生肉を見かけなくなったせいもあり、メニューにあるとつい頼んでしまいます。お皿いっぱいに薄く広げられたオーガニックビーフが見た目に新鮮でした。もうひとつは「トラウトのサラダ仕立て」でタルタルとは好対照、みずみずしくて色鮮やかでした。

メイン:チョウザメのポワレ

前菜が牛肉だったので、メインは魚を選びました。チョウザメのポワレ(蒸し焼き)に濃厚なソースが添えられていました。正体は「サワークリーム×醤油」で、少し酸味があって、まったりとしたテクスチャーです。チョウザメはキャビアが有名ですが、切り身は淡泊な味わいです。やわらかくて火の通し方が絶妙でした。トッピングの葉っぱもパリパリ、添えられた小さなコールラビはサクサク、食感のアクセントになりました。味わいも食感もバラエティーに富んだ一皿です。

デザート:ヤギのチーズクリーム

Goat cheese cream / milk powder / dried cranberries)ⒸPen&Voyage
ヤギのチーズデザートです。「麻の実ビスケット」にはコーヒーシロップがしみ込ませてあり、ちょっとティラミスみたいです。クセもなくいただけました。ラトビアで麻の実は伝統的な食材で、マーケットでも見かけました。バターに混ぜるのが定番だそうです。
日本で言えば「道の駅」で売っていそうな素朴な産直品や伝統の器をセンスよく使い、ていねいに仕上げたレストランです。この記事の中の3軒では最もカジュアルで、カフェづかいにもよさそうです。
Baltā Kaza(バルター・カザ)
住所:Skārņu iela 4, Centra rajons, Rīga, LV-1050 ラトビア
営業時間:10:00-0:00(原則無休)
公式Instagram
眺めもごちそう「Kolonāde. Our Stories …」(コロナーデ)

旧市街を出てすぐ、バステイカルンス公園の中にあるのが「Kolonāde(コロナーデ)」です。ラトビア独立のシンボル・自由記念碑もすぐ近くで、広場では式典や集会が開かれます。東京でいうと皇居前広場や丸の内界わいのような場所かもしれません。そんな立地にふさわしく、店内は広くゴージャスな印象です。一面のガラス越しに緑やイルミネーションを楽しみながら、ゆったりと食事が楽しめます。


前菜:タコのスパイシー・かぼちゃクリーム

カボチャのピュレ/チェリートマトのピクルス/チリオイル/ティムットペッパーのクリームソース
Octopus with spicy pumpkin cream
Pumpkin purée, pickled cherry tomatoes, chili oil, creamy Timut pepper sauceⒸPen&Voyage
前菜は2択で、牛肉のタルタルかタコが選べました。ラトビアではタコを食べるのだなとうれしくなり、タコにしました。カボチャのピュレの色が鮮やかです。貴重なネパール山椒(ティムットペッパー)がピリッと効いていました。

メインは3択、ビーフステーキ

Asparagus, arugula, matured cheese, bourbon-sweet cream sauceⒸPen&Voyage
メインは銀ダラのフィレ、ビーフステーキ、そしてビーガン用と思われるポテトとトリュフのニョッキから選べました。ラトビア最後のディナーだったので、ここはガツンとビーフステーキに。肩越しから運ばれた皿が目の前に降りてきて驚いたのは、肉が付け合わせかと思うほどのアスパラガスの束です。ルッコラとチーズのシンプルな味つけです。ふっくら焼き上がった赤身を「合いの手」にしていただきました。
デザート:ヨーグルトムース

Blueberry–yogurt cream cake, Salted caramel, lemon cream, sour cream–rhubarb ice creamⒸPen&Voyage
「コロネイド」はデザートがキュートでした。シンプルなヨーグルトのデザートです。ガッツリ食べたあとにはちょうどいいサイズでした。ちょっとのアイスにもサワークリーム入りで幸せです。ラトビアは発酵乳製品パラダイス、さっぱりいただけました。
Коlonāde(コロナーデ)
住所:Brīvības laukums 1, Centra rajons, Rīga, LV-1050 ラトビア
営業時間:12:00-22:00(月~水、日)12:00-23:00(木~土)
公式サイト
(取材協力:ラトビア投資開発公社<LIAA>観光部、LOTポーランド航空)
ラトビア バルト三国の中央に位置する。人口180万人。面積は約6.5万km²で、九州と四国を足したぐらい。国土の半分が森林。中世からドイツやポーランド、スウェーデン、ロシアなどの支配を受け、20世紀には独ソに占領された。1991年にソ連から独立を回復。公用語はラトビア語。通貨はユーロ。
「バルト海の真珠」と呼ばれる首都リーガは13世紀からハンザ同盟に加盟し、バルト海交易の拠点として栄えた。ドイツ商人らの営みを今に伝える街並みは「リーガ歴史地区」として1997年、ユネスコ世界遺産に登録された。北緯57度はモスクワや米アラスカ州南部と同程度。人口は60万人ほどで、バルト三国では最大。







